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2011.12.20 Tuesday

非常に厳しい状態

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    マフラーのステーをフレームに取り付ける際、固定するボルトが締め付け途中で折れてしまった!

    というヘルプ電話をお客さんから頂きました。

    ソフテイルのマフラーステーに使われているボルトは、スチールの見慣れたものだと容易に推測。
    フレーム側のねじ山が錆びていることが多い場所なので、それで固着してしまって折れたのだろう。

    「折れてしまったボルトは取り除けますよ!」

    と、簡単に引き受けました。。。。。何よりお世話になっているお客さんですからね!

    その後、車両をお預かりし、日曜の朝から作業開始。
    まずは状況を確認。確かにボルトが折れてます。
    でも、なんかスチールのボルトがねじ切られたような切断面ではないような・・・・・(-_-;)
    よく使われている普通のスチールボルトは、曲がったりねじられた時、‘粘り’が生じます。
    なので、折れたりねじ切られたりした場合、力がかかった方向に粘った痕が残るはずなのです。
    でも今回の場合、まるで粘った痕がありません。

    ここでちょいと解説。
    折れたボルトを取り除くには、ドリルでボルト部分のみを貫通させて、その後にねじ山部分を除去します。
    なによりもまずは、ボルトの中心にまっすぐドリルの刃を立てなければいけません。

    話を戻します。
    もしかしたらお客さん、ステンレスなどの国産の特殊なボルトを使ったのかな?なんて思いながら、
    まずは折れた断面を慣らします。
    平面に慣らすことで、ドリルの刃がセンターにくるようにするのです。

    ここで、気になる点が・・・・・
    途中で折れてしまっているボルトの材質が、やはり普通じゃない・・・・・・(-_-;)
    ステンよりも、硬ーい感じ。とても嫌な予感がします。

    超鋼のドリルをたててみても、まるで刃が立ちません。
    刃を研いでも、新しい刃にしても、まるでダメ。
    ダイヤモンド砥石のリューターで、やっとちょっとずつ削れるという感じ。



    でも、リューター側も削れていき、破損・・・・・
    結局、これくらい削れたところでオーナーさんに電話しました。



    すると、衝撃の事実が!
    なんと、市販の道具を使ってスクリューを取り出そうとしたのだが、その工具も途中で折れた!
    ということでした。(-_-;)

    どうりでドリルの刃がたたないわけです。
    焼きが入っている超鋼が相手なわけですから・・・・涙
    そりゃリューターの刃も消耗する一方ですね。。。

    正直、焼きが入ったものが相手では、取り除くことが非常に困難になります。
    最悪、エンジンなどを降ろし、フレームを取り外して、プラズマ破砕機などの大型機器を使わないといけません。
    何十万円もかかってしまいます。そんなの現実的ではありません。

    でも、引き受けた手前、あきらめたくありません。
    これがうまくいかなかったら、せっかく購入したマフラーが取り付けられないわけですから、
    お世話になっているお客さんがかわいそう。
    ここから私にとって修行のような作業が始まりました 笑

    強烈に固いダイヤモンドリューター(高価w)を買い、高回転の高級ミニグラインダーで、
    歯医者さんが慎重に奥歯を削るように、神経に触れないように、とにかく集中!
    少し削っては油を注入の繰り返し。とにかく熱が入らないように真ん中のみを削ります。

    そんな修行のような作業をすること3時間。とうとう貫通することに成功!!


    喜びたいところですが、まだ山の頂上にはほど遠い(-_-;)
    ここからは、さらなる集中力が必要です。
    ねじ山を削らないように、ボルトのみを削っていかねばならないからです。
    ライトを当てて、中を確認しながらちょびっとずつ削っていきます。


    時々ボロッと出てくる切り粉は、まさにねじ山に噛んでいたボルトです。
    これが出てくると、ゴールは近い!!



    このように、うまくいけばボルトのみが取り出せるんです。
    この時点で、折れてしまったねじ取り工具は高級リューターによりすべて粉になっているはず。
    残るは、やわらかいスチールのボルトのみですから、良い塩梅に削ったらタップを立てます。



    かじり防止のスレッドコンパウンドは必須!
    慎重に、まっすぐタップを立てます。
    下穴がうまく開いている場合は、そんなに力も要りません。
    ちゃんと余分なボルトのカスだけが取り除けます。
    ねじ山もきれいに蘇ります。



    あとは、新しいボルトを慎重に入れてみてトルクがかかるかチェック。
    今回、かなり大変な作業となってしまいましたが、予想以上にうまくいきました。
    実作業時間は6時間以上かかってしまいましたが、満足いく仕事ができたと思います。
    何より、これでマフラーがちゃんと付けられますから、お客さんも満足ですね。

    ご自分で作業されると、どうしても太刀打ちできない壁が現れることがあると思います。
    市販の安いねじ取り工具を使ったことが、今回の失敗でしたね。
    ただねじ切ってしまっただけであれば、こんなに大変な作業にはなりませんでした。
    こりゃ困った!と思ったら、無理をされる前に、まずはお電話ください。
    それよりも、当店にお任せしていただくことが、一番良いのですけど・・・・
    趣味のバイクいじりは楽しいですから、ここでは何も言いませんよ 笑

    ただ今、私の指先に刺さりまくっている鉄粉をどうしようか考え中です 笑
     
    コメント
    はじめまて。スポスタの スタッドボルトのボルトが折れ、逆タップ(ボルトツイスター)も折れてしまい、どうすればいいかと思い、いろいろ探しているうちに貴ブログにたどり着きました。
    強烈に固いダイヤモンドリューター(高価w)を買い、高回転の高級ミニグラインダー ってどんなのですか? もしよろしければ教えていただきたいです。よろしくお願いします!
    • km
    • 2017.07.13 Thursday 13:36
    km様

    折れちゃったのは、エキゾーストのスタッドですかね?
    だとすると、場所によってはヘッドを外さないと厳しいかもしれませんね。
    マイクログラインダーは下記のリンクをご参照ください。
    http://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/223000315309/

    ダイヤモンドリューターは、3mmシャフトのもので一本¥5000ほどしたかと思います。

    アルミのメネジを傷めないように、焦らず慎重に削っていくしかありません。ライトで照らして、切子を掃除しては削って・・・・
    ご武運を祈ります。
    • ミヤタ
    • 2017.07.13 Thursday 18:26
     EHL理論の専門家であれば、油膜は絶対に切れないというでしょうね。しかし境界潤滑状態というのもうすでに油膜は切れています。電気抵抗を計った実験が調べればたくさん出てきます。しかし問題は「油膜が切れる」と言いたくなるような突然死(サドンデス)が起こるのはなぜかということです。それに明確な答えを出したのが久保田博士のCCSCモデル。なんと潤滑油由来の表面に張り付いたグラファイト膜(トライボフィルム)がナノメートルのダイヤモンドになるというものです。詳しくは「境界潤滑現象の本性」で検索してみてください。
    • メタルマン
    • 2019.12.23 Monday 22:55
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